サルビアは、衣・食・住などの暮らしのなかに、
「こんなものがあったらいいな」をかたちにしていく活動体です。
グラフィックデザイナーのセキユリヲが描く図案を使って、
伝統工芸や地場産業など、こだわりの職人さんたちと
現場で話しながら、ものづくりをしています。
2011年より、東京・蔵前にアトリエ兼ショールームを構え、
月いちショップやワークショップなどをひらき、
いまの暮らしによりそうものづくり・ことづくりを提案しています。




ーサルビアのはじまり

「古きよきをあたらしく」。2000年によちよち歩きではじめたサルビアの活動も、11年目になりました。

20代の終わり頃、あまりに忙しくて体調を崩し、家で半年ほど休養していたことがあります。 昭和のよき時代に建てられた公団住宅の窓からはたっぷりと陽が注ぎ、 庭に植えられた植物を時々眺めてはスケッチをしていました。一番の心の支えは大きなけやきの木。 冬でも生命力にあふれ、太陽に向かって長く枝を伸ばしていました。  日々スケッチを続けていくうちに、どんどん絵が抽象化されていき、グラフィックの作品ができあがりました。 「この模様、クッションにしたいな」「スカートにしたらかわいいかもしれない」という思いが募り、 自分で使うものをつくりはじめたのが「サルビア」の活動のはじまりです。 テキスタイルのデジタル化はまだ難しかった時代ですが、描いていた「抽象的繰り返し図案」を インクジェットのプリンタで布に出力し、自分で縫ったり知り合いに手伝ってもらったりしながら 「自分が使いたいもの」をかたちにしていきました。
                  (『季刊サルビア』vol.24より)


ーサルビアのいま

ひとりでこつこつ雑貨をつくりためていたのが第一期、仲間が増え、日本の伝統工芸の職人さんと一緒にものづくりをはじめたのが第二期だとすると、 今は第三期にあたるのかもしれません。サルビア給食室のワタナベマキに加え、紙や布を使ったものづくりをするサルビア工房の上原かなえも 独立して仕事をするようになりました。

わたしは、スウェーデンで一年間暮らし、テキスタイルを学んできました。 「 織り」や「染め」の基本的な技術を勉強したというだけではなく、 春夏秋冬を通して北欧に根ざす「豊かな暮らしかた」を身につけるという 自分の人生にとって本当に貴重な時間となりました。 手編みのくつした、キッチンクロス、陶器のお皿、木のバターナイフなどなど… 手工芸の学校にいたせいもあるでしょうが、毎日使うものだからこそ、 自分の手でつくって大事に使おうという精神にあふれた人たちばかり。 おばあちゃんから譲り受けた服や家具を手入れしながら長年使っているのがとても心に残りました。

そしてこの冬、隅田川のほとりの古いビルに小さな一室を借り、サルビアはまたあらたな活動をはじめます。まだ真っ白な空間ですが、 これからどんなふうに使っていこうかとみんなで考えているところです。ひとつは、テキスタイルづくりの「アトリエ」として。スウェーデンから大きな織り機が届き、 本格的な織りものや手軽なバンド織りができるようにととのえました。ワークショップを通して、北欧の「スタイル」ではなく「心」を伝えていきたいと考えています。

もうひとつは、「月いちショップ」として。日本ならではの季節感を味わいながら、 たくさんのつくり手が結びついて、人と人の縁が深まって行く場になれば、と思います。

「古きよきをあたらしく」。今まで積み重ねてきたことを大切にしながら次のステップを踏み出そうと思います。


                      2011年1月 セキユリヲ



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